犬では、最も多い寄生虫の一つです。
体調10cm程の犬回虫という寄生虫が、原因になります。
ほとんどの場合は母犬からの感染です。母犬の体内にいる間、もしくは母乳を通じての感染になります。
それ以外に経口感染する場合は、感染犬の排泄物に含まれる卵を体内に持った昆虫などを食べてしまった時などです。
卵は犬の腸の中で孵化し幼虫となり、その後体内を移動し最終的に小腸で成虫になります。そこでまた卵を生むというサイクルを
繰り返します。幼虫は胃壁を突き破り、肝臓や肺にまで達する事もあります。
成犬の場合、比較的症状が出にくいので解かりづらいですが、食事量の割に痩せているなどの状況では、回虫を疑う必要性もあ
ります。
子犬の場合は、明らかに体重増加が遅れてきますから、比較的容易に発見する事ができます。
さらには、嘔吐・下痢・食欲のばらつき・お腹が異常に出ているなどの症状でも確認はできるかと思います。
更に、幼虫が肺などに寄生している場合は、咳が良く出るなどの症状もみられます。
回虫が体内にいるかどうかの検査は、糞便中に回虫の卵があるかどうかを検査することになりますが、一度の検査では完全に卵
を確認する事は難しく、定期的な検査が必要となります。
回虫が体外に排出された場合などであれば、すぐに駆虫薬を処方します。
しかしこの場合も、他の寄生虫がいないかの確認のために糞便の検査はしておくべきです。
駆虫薬にもいろいろありますので、市販の駆虫薬を使用する場合でも糞便検査を行って、どのような寄生虫がいるのか確認をする
事が必要だと思われます。
犬回虫は人間にも感染する、人畜共通感染症です。
定期的な検査を行い、回虫が発見されたら速やかに駆虫する事が必要となります。糞便などによる経口感染率が非常に高いと考
えられますので、他の動物の糞便には、近寄らせないようにするなどの配慮も必要です。
繁殖を考える場合は、交配させる直前に必ず駆虫をする事が、子犬の感染率を下げる最良の方法と考えられます。
いわゆるサナダムシと言う物です。人間にも感染する可能性のある、人畜共通感染症の一つです。
最大では体長50cmにまで及ぶ物もある条虫は、ノミを中間宿主とし、犬などを終宿主とする寄生虫です。
小腸に寄生する事が多く、便の中に節が分かれて出てきます。この節の中に条虫の卵が含まれていて、それを取りこんだノミの
体内で孵化します。そのノミを犬などが食べてしまった場合、体内に幼虫が入り感染します。
特に症状を示す事はありませんし、深刻な症状に陥る事も少ないと考えられますが、子犬の場合は成長の阻害などにつながる
可能性もあります。
肛門付近を痒がってなめたり、地面に擦りつけたりする行為を見ることがあります。
回虫の時と同様の糞便検査を行う事で確認できます。
しかし、回虫に比べ発見しづらいようなので、定期的な検査が必要になると思われます。
ノミを中間宿主として媒介してきますから、まずノミを駆除する事が先決になります。
基本的に条虫は、中間宿主の存在なしには感染はしないと考えられます。ノミの予防をすることで、かなりの確立で予防できる寄
生虫だといえると思います。
犬鉤虫症(いぬこうちゅうしょう)と読みます。文字通り鉤状の歯?をもった寄生虫です。沢山の種類があり、犬鉤虫以外では人間
に感染する可能性のある物もいます。
体長は2cm程度で、鉤状の歯をもち犬の腸内に寄生し吸血して成長します。
経口感染による感染が主ではありますが、皮膚組織を食い破り体内に侵入する場合もあります。経口感染の場合は、糞便の中に
あった卵がおよそ一日で孵化し、それが犬の体内に入り、腸内で成長します。
皮膚から侵入したものは一旦肺に行き、咳と共に体外に排出された物が再び口の中から入って行きます。
腸内の虫はおよそ3週間で卵を生み、糞便の中に排出されます。
食欲不振、腹痛などの症状に加え、消化器の出血が見られる場合があります。
小腸からの出血では便がタール便となりますし、下部の出血では、血液のついた便が出る場合があります。
鉤虫による吸血が進むと、貧血などを伴います。ひどい場合には、この貧血や、栄養障害によりきわめて重篤な症状に陥る事もあ
りますので、特に子犬には注意が必要と思われます。
検査は、同様に糞便検査を行います。
駆虫薬で駆虫は可能ですが、貧血などの症状がひどかったり、栄養障害が発生している場合は、輸血や栄養補給なども必要に
なってきます。
糞便の中で孵化する卵ですから、感染犬の糞便等には近づけないようにする事が大切です。
同様の理由から環境を清潔に保ち、糞便は速やかに処理する事が大切です。
フィラリアと呼ばれる病気は、犬糸状虫が寄生して起こる病気です。
日本では主に家蚊を媒介として広がっている寄生虫です。
犬の心臓や肺の血管に寄生した糸状虫はその体内で、ミクロフィラリアと呼ばれる子虫を生みます。これが血液中に入り、その血
を吸った蚊の体内で感染子虫に成長します。
犬が蚊に吸血される際にこの感染子虫が犬の体内に入り成長を続け、3ヶ月〜4ヶ月後には肺の血管に寄生して再び、ミクロフィ
ラリアを生みます。
心臓や肺に障害を起こしますが、初期の感染では目だった症状が出ないため見逃される事が多いです。
症状が進行すると、咳や体重減少などが見られるようになります。
更に症状が進み末期になってくると、心機能の低下(不全)や腹水が溜るなどの症状を引き起こし、極めて治療が困難になります。
薬物により駆虫を行う事が主ですが、状況によっては手術により物理的に成虫を除去するなどの治療をされる事もあります。
いずれにしても、寄生している場所が肺や心臓のため、手術自体も大変困難な場合が多いので、早期発見が極めて重要になりま
す。
現在では、フィラリア予防薬を定期的に(1回/月が主流)投与することで感染を予防することができます。
感染しても症状が出てくるまでに病状は進んで行く病気ですから、定期的な血液検査(1回/年)による、ミクロフィラリアの確認と予
防薬の投与を、確実に行ってください。
ニキビダニ症は皮膚病として分類されている事も多いですが、毛包虫という寄生虫による疾患です。
犬ニキビダニが犬の毛穴に寄生して皮膚炎を起こす病気です。
生後まもなく母犬からの感染が多く見られます。成犬では比較的無症状でも抵抗力の少ない子犬には、部分的な脱毛が見られた
りする場合があります。
発症の状態は2つに分けられ、前出のように部分的な脱毛を起こす場合と、全身に広がる場合があります。
発症する年齢も若年性のものと、成犬になってからの物とに分けられます。
ニキビダニは正常な犬の皮膚にも見られることが多くありますが、通常は病気の原因にはならないようです。したがって、成犬にな
ってからの発症の場合は、甲状腺の機能低下などによる免疫力の低下による事も考えられます。
局所的に発生する場合は頭部と四肢に多くみられるようです。
痒みを伴う物は少なく、脱毛とふけが多く見られます。それとは対照的に、全身性のものでは痒みも多く、掻き毟るための二次感
染症が心配になる場合もあります。
毛を刈ってしまい、殺ダニ剤による薬浴がもっとも効果的な治療方法です。
ただし、成犬になってから突然脱毛を発症した場合は、他の疾患(甲状腺機能低下)などにより発症している事も考えられますか
ら、原因になっている疾患の治療をする事が先決になる場合も考えられます。
このダニ自体はどこにでも生息している物ですし、健康体ではダニがいても発病しない事から考えると、予防法は特にないと思わ
れます。せいぜい皮膚を清潔にして、定期的なシャンプーをする事をお勧めします。
人間で言えば、水虫、たむしといったものと同様のカビの一種です。
真菌(カビ)による、皮膚の感染症です。
感染している動物からの接触感染が主な感染源と考えられます。人間にも感染し、リングウォームといった皮膚炎を起こす事もあ
ります。
真菌が皮膚の角質層に感染し、痒みを伴った円形の脱毛・発赤・かさぶたといった症状を起こします。
円形、あるいは楕円系に広がって行くのが特徴的で、それを掻き毟る事で感染部位が広がって行きます。
外用薬による治療が人間では一般的にできますが犬の場合、舐めてしまう事から内服薬(経口抗真菌薬)による治療や、紫外線
殺菌による治療が一般的です。
真菌はしつこいため、全滅させるのに時間を要します。その為治療には、根気を必要とします。
完全に真菌がいなくなるまでの内服薬投与が望まれます。
感染力が強いため、感染している動物に接触しない事が一番の予防法です。
また、定期的にシャンプー等をする事によっても一定の効果は、期待できます。
最近本州上陸の噂も出ている、エキノコックスも、寄生虫の一種です。
単包条虫と多包条虫に分類されますが、北海道のキタキツネを宿主とするエキノコックスは、多包条虫とされています。
終宿主を犬・キツネ、中間宿主をねずみ・人とする寄生虫です。終宿主には成虫が寄生し、中間宿主には幼虫が寄生します。
感染のメカニズムは常に、終宿主→中間宿主、あるいはその逆で、同一宿主同士での感染はありません。
キタキツネはその中間宿主である野ねずみを食べる事により感染し、終宿主になります。
このキタキツネの糞などには大量のエキノコックスの卵が含まれているために、この卵の経口感染により人や野ねずみに感染し、
人や野ねずみは中間宿主となります。
成虫の寄生する終宿主である犬は、その腸内に寄生します。
よほど多数の寄生ではない限り、障害はほとんどありません。むしろ、逆として卵を接種することにより、まれに中間宿主になって
しまう事があり、この場合は肝臓へ寄生しますので、肝機能障害や腹水などと言った症状を起こします。
抗寄虫剤を注射・内服する事により治療は可能ですが、犬が中間宿主であった場合、人間に感染する可能性と、感染した場合の
危険性から考え安楽死といった方法を取らざるをえない事があります。
犬は比較的中間宿主にはなりにくい傾向にありますので、ひどくなければ犬自体に心配はないのですが、前出の理由から安楽
死などという選択を強いられる事もありますので、むやみにキタキツネに触らない事や、触ったら殺菌をきちんとする(特に人)、
野ねずみなどの肉を拾い食いさせないなどの予防法が一番です。
最近、関西方面から徐々に東へその勢力範囲を広げているバベシアは、感染すると極めてしつこい厄介な病気です。
バベシアギブソニ(日本では)に代表される寄生体の、赤血球上への寄生が原因で起こる血液の病気です。
感染の媒介を行うのは、日本ではフタトゲチマダニで日本全国各地に生息していますが、バベシアを媒介する可能性のある物は
九州・四国・関西に多いとされています。
六甲・生駒は有名な汚染地域です。この地域が年々拡大し始めています。
バベシアはダニに吸血される事により、ダニの体内から犬に感染します。発病までにしばらく時間がかかることから、バベシアだと
確定する事が遅れる事も多いようです。
症状が重度のものだと、血尿・黄疸・発熱・貧血などが多く見られますが、軽度の場合は、発熱や食欲不振と言った症状しかでな
いようです。
血液採取を行い、赤血球のDAPI染色を行って蛍光顕微鏡で確認する事ができますが、多発地域の獣医師でないと確認しづらい
と言った事もよく耳にしますので症状が確認されたら、汚染地域でダニに吸血された事はないか調査して、その旨を伝える事も必
要と思われます。
薬物の使用も行われますが、バベシアすべてを死滅させる事はできず、減少させた上、犬の免疫力で感染をコントロールできる
ようにする事しかできません。
汚染地域とされている場所には近寄らない事が一番です。ギブソニに対する免疫ワクチンは、まだありません。
ダニを寄せ付けないような方法も有効な予防方法だと思われます。背中に垂らすタイプのダニよけの薬品などが効果的でしょう。
通常のノミ取り首輪などは、マダニには効果はありません。