雌犬の避妊率の低い日本では、比較的多い雌犬特有の病気です。
発情期になると子宮の細菌感染に対する抵抗力が弱まります。その為子宮内に入った細菌により子宮内膜が感染し、その後頸
管が閉じると子宮内に膿が溜まり始めます。原因菌はさまざまで、一般的にどこにでも存在する細菌です。
比較的ゆっくり進行する病気ですが、腹腔内で膿が漏れた場合などは、腹膜炎を起こして大変重篤な症状になる場合もあります
ので、早期発見治療が重要です。
妊娠・出産の経験には関係なく起こりますし、比較的老犬に多い病気ですが、若い犬でもしばしばなることがあります。
発情後に若干、陰部からの分泌物が出る場合もありますが、あまり気づかれる事はないようです。
症状が進んでくると、元気消失・食欲は不振ですが多飲・多尿になります。
子宮が膨張して、腹部が張れあがったようになる場合もあります。
レントゲンや超音波などで子宮の状態を確認します。膨張した子宮が確認されれば、速やかに子宮・卵巣を摘出します。
その後、二次感染の防止のため抗生物質の投与や、水分・電解質の補給を行います。場合によっては、輸血が必要な事もありま
す。
腹膜炎を併発してしまっている場合は、この限りではありません。
連続した抗生物質による腹腔内の洗浄等を繰り返して行く必要があります。
手術に耐えられないなどの理由で内科的治療を行う場合もありますが、すぐに再発してしまうなど、殆ど完治する事はありません。
早期発見によって重篤な症状になる事は回避できると思います。
繁殖の目的がないのであれば、早期に避妊手術を行う事によって回避できます。
前立腺は雄特有の器官で、したがって前立腺の病気も雄特有のものです。
前立腺は、雄犬の膀胱の近くにあり、精液の成分を産出している器官です。
前立腺から液を取り出す事で、細菌性の物は確認できます。
さらにX線検査によって、前立腺の状態を確認します。肥大が確認され、中に嚢胞ができている事が解れば、尿検査や生検などで
更に確認します。
細菌による炎症の場合は、抗生物質による内科的治療が用いられますが、嚢胞や腫瘍などでは、外科的手術が行われます。
外科的手術では、睾丸の摘出を行う事によって根治療法とします。
ただし、悪性腫瘍の場合転移が考えられますので、睾丸摘出
が根治療法にはなりません。
早期に去勢手術をする事で、前立腺の病気は完全に予防できます。
慢性腎不全は腎臓の機能の3/4が死滅してしまった状態でおこります。
腎臓は、血液中の老廃物を濾し取る役割をしています。(血液濾過機能)この腎臓が何らかの原因でこの機能をしなくなった状態
で、急性と慢性に区分されます。
短期間のうちに急激に腎臓の機能が低下し、尿毒症(体内に濾過しきれない老廃物が溜まる事により全身的な症状が出ます)など
を引き起こすものを、急性腎不全と言います。原因として考えられるのは、レプトスピラなどの感染症や、中毒により腎臓自体に障
害が起こった場合、もしくは事故などによる膀胱・尿道の障害などでも引き起こされる事があります。
これに対し慢性腎不全は、徐々に腎臓の機能が低下して行き、腎臓の
3/4が破壊され機能しなくなった時に症状が出始めます。
急性腎不全が慢性腎不全の原因になる事もあります。
初期の症状では多飲・多尿が多くみられます。
腎不全になると、胃液の分泌が多くなるために潰瘍などができやすくなります。その為に食欲が無くなったり、嘔吐を起こしたりしま
す。この時点では、すでに尿毒症を起こしている可能性もあります。
更にひどくなると元気消失、ふらつき、痙攣や昏睡に陥る事もあります。
血液検査・尿検査や、レントゲン・超音波検査などで、一般的な確認を行います。
原因が腎臓以外にも考えられる場合は、尿路造影検査を行う事があります。
急性腎不全の場合、原因を取り除いてやる事によって腎臓の機能回復を図ります。この場合の腎臓の障害は徐々に回復する可
能性もあります。内科的治療で、点滴により不足している水分を補ったりします。
慢性腎不全では破壊された腎臓の組織は回復することはありません。その為、残った腎臓部分に影響が広がらないようにする事
と、腎機能が不足するために起こる障害を機械的に助けてやる方法が取られます。
人間では人工透析になるのでしょうが、犬ではまだ一般的ではありません。どこの病院でも行えるわけではありません。
症状が落ち着いたら、徹底的な食餌療法を行って残った腎臓に負担をかけないように心がけて行きます。
低リン、低Naで適度の良質蛋白を与えて行く事になります。
感染症の予防はワクチンで、中毒・事故は飼い主の責任で予防できます。
更に日頃からの食生活で、リンやNaの接種過多には注意が必要です。高齢になるほど発生しやすくなりますから、定期的な健康
診断も早期発見・治療に効果があると思われます。
比較的多く発生する病気です。細菌感染による膀胱炎は、雄より雌に多い病気です。
犬の外陰部や包皮は常に細菌でいっぱいです。
細菌はそこから尿道を通り膀胱や尿道に感染します。尿道に感染したものを尿道炎、膀胱に感染したものを膀胱炎と呼びます。
犬の膀胱炎で最も多いのは細菌感染によるものです。感染する細菌はさまざまですが、比較的雄より雌の方が多く発生するの
は前立腺があるかないかの違いによる物だと考えられています。
痛みを伴うので、一度の排尿も少なく頻尿になります。膀胱炎の症状のによっては、膿が出る膿尿(白くにごる)や血液の混ざった
尿が出る場合もあります。
痛みがひどい場合などは思わず声を出して鳴きながら排尿する犬もいると聞きます。
症状が悪化すると、発熱や元気消失が見られます。この場合は、腎盂腎炎を併発している可能性も考えられます。
レントゲンや超音波検査などにより、膀胱の状態を確認します。さらに尿の培養を行い、どんな細菌に感染しているかを調べた後、
適切な抗生物質の投与を行います。抗生物質は長期間投与しないと(数週間)再発の可能性もあります。
結石性の物は、手術等によって結石を取りだします。
排尿を我慢させない事が何よりの予防法であると考えられます。
また、尿の観察を行う事で早期発見が行えます。室内犬の場合は、ペットシーツ等を確認すればよいのですが、室外で排尿をする
習慣の場合は発見が遅れてしまったりする場合が多々あります。たまには、室内のペットシーツ上で排尿をできるような環境で
飼育する事が、早期発見につながります。
犬の尿石症は遺伝的体質や、不適切な食事管理によるものが多いとされてます。
尿石症とは、腎臓・尿管・膀胱・尿道内に結石が形成される病気です。
結石は尿道や尿管を傷つけたり、閉塞させてしまう事もあり、処置が遅れると腎臓にも深刻な障害をもたらす可能性のある病気で
す。
原因として、ビタミン・ミネラルバランスの悪さ、飲水量の不足や尿のPHなどが考えられます。さらに、尿石症になりやすい体質は
遺伝性であるとも言われています。
犬の尿石症で最も多いのは、ストルバイト尿石です。
尿石の存在する場所により症状もさまざまですが、血尿・頻尿や、痛みを伴った排尿の為に、一度の排尿量も少なくなります。
尿道や尿管を結石がふさいでしまったような場合は、腎不全を起こしてしまいますので、腎不全の症状が出てくる場合もあります。
レントゲン検査や、造影レントゲン検査、超音波検査、尿検査などで結石のある事や場所や状態を確認し、必要な場合は摘出の
ための手術をします。
尿石が小さな場合などは、尿石を溶解させる薬剤の投与といった内科的療法が取られます。
細菌感染の恐れがある場合などは、抗生物質の投与もします。
食事の成分に気をつける事と、水分をしっかり与える事が一番とされています。
遺伝的要因もあるので、尿石の多発しているラインからの犬の購入は避けたほうが賢明でしょう。